今回は悩み相談を聞いて下さい。
えほん屋・ありが10匹。(現、ありがと書店)は、細く細く続けて約9年になります。
そんな小さな本屋にもいろいろなお客様にご来店いただきました。
その度に、いろんな感情が沸いてきます。
子どもたちの成長は刻一刻と変化し、又 新しい命が誕生し続けるわけですから、
良い本が届かないことへのあせりもうまれてきます。
子どもたちは1人では来れませんから親御さんも一緒です。本屋ですから購入していただきたいのですが、押し付けてはいけない。でも、良い本に出会うチャンスの場にいらっしゃってるわけですから、届いてくれという気持ちが先走り、言葉が多く説明的になり、結果、親御さんに届いた感触なくがっかりすること しばしばです。
子どもの本やさんでは、来店された親御さんへはどんな言葉をかけてらっしゃいますか?
それとも、言葉はなくとも届く何かがありますか?
赤ちゃんを抱いて、期待をしてきてくださるお客様がいらっしゃいます。
愛する赤ちゃんに絵本を読んであげたい一心で来られていることがわかります。
私は以前、勤めていた保育園で子どもの成長のことを見て、感じていたこともあり、そのことと合わせて、子どもが本に出逢うタイミングのことなどをお話してみるのですが、赤ちゃん絵本の浸透力は強く、お話しても、大人のただただ買ってあげたい、読んであげたいという欲求を強く感じます。
いつから、赤ちゃんに絵本を!という運動が始まったのでしょう。昔は、もっと、赤ちゃんの成長をみながら、徐々に自然に本が用意されていったと思うのです。子どもの成長を、感覚や人肌でなく、教育ありきの頭で育ててしまっているのではないかと感じる親御さんに出会うと、子どもさんの成長を楽しめないでいらっしゃるのではないかと心配になります。
そんなことを考えていると、文庫という場所は地域の子どもたちの成長を人肌でとらえ、一緒に育ててくれているという安心感のある場所だったのだろうと、その存在の必要性を感じます。
そんな、赤ちゃん絵本を信じて来店される親御さんには、どんな言葉をかけてあげてらっしゃいますか?
本屋をやっていて一番の喜びは、絵本を読んだ時、ぐーっと集中して楽しんでいる子どもの感性に触れた時です。この子とこの本の橋渡しができたような気がして、うれしくなります。と同時に改めて、届けることの責任を感じるのですが、井上さんは、たくさんの子どもたちに、本を届けてこられていますが、印象に残っているエピソードを教えてください。
伊藤寛美
拝復
ご来店してくださるお客様へのお声かけ 難かしいですね。
まず、どのくらいの年齢のどのような本(プレゼントかご自宅用か等)をお探しかをお聞きします。ご自宅での本を探しておられる時は、今どのような本を読んであるか、今までで気に入った本はどんな本かなどをお聞きします。そうすると、そのお子さんのことが来ていなくても感じられ、好きそうなのを数冊選び出し、簡単な説明をし興味がおありなのを、お時間が大丈夫でしたら読み聞いてもらいます。すべてのお客様にこの様な対応は出来ません。
店を始めた当初は ほとんどの方が人づてでのご来店でしたが、今はネット(ブログを載せているので)を見ていらっしゃる方も多く、求めてあることも多岐にわたっています。
お客様が発せられるものを感じ、それに応えられればと思っています。そういった柔軟さが必要な気がします。そして、お子さんが一緒じゃなくても そのお子さんのことが感じられるかどうかは、子どもの本の専門店として大切なことだと思っています。
「言葉はなくても届く何かがありますか?」と書いていらしてて、書かれてた意味と少し違うかもしれませんが、お客様が本との出会いを見せてくださることがあります。
お客様が重なり、何もお話し出来ないまま、お支払いをしてくださる時「え、この本を選ばれたんだ!」と思うことがあります。本を通しその方に出会えたような感覚です。
同じ本が好きって、あまり多くを言わなくてもわかってくれる友達(親友に近い)のような感じがしますよね。そのようなことは 大人の方にもお子さんにもあり、本屋として嬉しい出来事のひとつです。
地域によって始まった時期は異なりますが、20数年前「ブックスタート」が始まりました。赤ちゃんの時から本に親しんでいれば習慣になり 本好きになるのではということで、保健所での検診の時 本が配布されています。
現在 店に来る子のほとんどが赤ちゃんの時から本を読んでもらってた子です。
店で本を読むと、聞いているけど心が動いているのが伝わってこないのを感じます。
赤ちゃんの時と2歳半から本と出会うのでは、出会い方が違うような気がします。本ですから文学(心が動くもの)として出会ってほしいです。心が動くという出会い方をすると、楽しくて、真綿が水を吸収するように、本の世界に入っていきます。しかし、赤ちゃんから本に出会っている子は、そこが淡泊なような気がします。
赤ちゃん絵本を求めて来られるお客様によくする話は、いろんな果物が載っている絵本を見せるのではなく、例えば本物のりんごを持って来、その手ざわり・香り・食べた時の甘ずっぱい感じ、そういったことを五感に感じさせてくださいと言います。五感が発達する時期なので、本からではなく本物に 直接 触れさせてあげていってほしいです。
印象に残っているエピソードはたくさんあります。なので おいおいと。
「日本昔話百選」(三省堂)の中に「桃太郎」が入っています。店に定期的に通ってくださってたお客様の4歳の男の子がこのお話が大好きで、寝る前にまず「桃太郎」を読まされ、持って来た絵本を読まされます。とおっしゃってました。
「日本昔話百選」の中の桃太郎は正義感あふれる桃太郎ではなく、働き者でもなく やっと山仕事に行っても、弁当を食べるとき以外は昼寝ばかりしていた、寝太郎型の桃太郎です。この昔話が持っているおおらかさや生きていくことの醍醐味を4歳の子が感じ、毎晩楽しんでいたのですね。子どもって すごいなと思います。現在 その子も20歳頃になっているでしょうか。一度も会った事はありませんでしたけど、「桃太郎」を読む度にその子の 子どもが持っているすごさを感じています。
伊藤さんは9年続けて来られて どのようなエピソードがおありですか?9年前お好きだった本と 現在 お好きな本と変化はありますか?
2021年 8月10日 井上良子
0 件のコメント:
コメントを投稿