2023年6月30日金曜日

7月の営業日のご案内

7月の営業日はカレンダーの黄色の枠の日にちです。

26日は通常の営業日ですが、外での販売がありますので、

申し訳ありませんが、店休日とさせていただきます。 

よろしくお願いいたします。



2023年6月24日土曜日

「ありがと書店」さんとの8回目往復書簡

井上さん

8回目の往復書簡になります。

今、私は保育士資格の勉強をしています。

その中には子どもに関する法律も含まれています。

今年の4月1日からは「こども基本法」が施行されました。

この法律は「児童の権利に関する条約」(1989年に国連にて採択)を基本としているとのこと。この条約の規定には次のような文言があります。

「(略)児童が社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神ならびに特に平和、尊厳、寛容、自由、平等および連帯の精神に従って育てられるべきであることを考慮し、(略)」(前文より)

「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢および成熟度に従って相応に考慮されるものとする」(第12条 意見の表明)

というように、子どもたちの権利が明記されています。

 これらの法律を勉強するにつれ、このような約束ごとを作り、守る側の大人が、平和、尊厳、寛容、自由、平等、連帯の精神を忘れがちなのではなかろうかと、冷汗が出ます。

この条約が国連で採択されたのが1989年。それまでにも日本独自の子どもに関する法律はいくつもあったなか、子どもの権利が明記されたのはここ数10年のこと。文学の世界では100年も前から、子どもの想像性や創造性に寄り添い子どもたちと謙虚に向き合われた作り手の本がいくつもあります。

 本の歴史と子どもに関する法律の歴史とを平行してみると、時代の中で子どもたちの環境が大人にどれだけ翻弄されていることかと頭をかかえてしまいます。そしてやはり、昔話や古典といわれ読み続けられている物語を大人が知ることがどんなに重要かということに思い至ります。

先日 ご案内をいただきました映画の上映会はいかがでしたでしょうか。

教育哲学者で、全国各地の小学校を回られ、対話的な授業実践をされ、「授業・人間について」の著者である 林竹ニ氏 のドキュメンタリー映画だったそうで、私も1度拝見したことはあったのですが、映画中の子どもたちの授業に集中している様子は忘れられません。

映画は1977年の小学校の授業風景なので、参加された方の中にはとても遠い昔の違う世界のように感じられた方もいらっしゃったのではないでしょうか。でも、この映画のなかの子どもたちの様子は、本屋に来た時にとても興味のある本に出会ってよんでいる時の彼らと同じですよね。

 今回は参加できませんでしたが、又 見たい映画です。

                               伊藤寛美

                               2023年5月21日



伊藤寛美 様

拝復

 梅雨に入り、雨にうたれて 紫陽花が美しいですね。

伊藤さん、8回目の往復書簡をありがとうございました。

 保育士資格の勉強中なのですね。お手紙を拝読し、守られるべき 子どもの権利を改めて考えさせられました。書いていらしてたように、これらの法律と現実とが相俟っているのかと、  おおいに疑問に感じます。

最近の改正入管法の成立をみても、人権尊重の観点からほど遠い国なのだと思います。人権が外国の人達とともに日本人に対しても守られていない。人権という言葉はあるがそれが生活の中に根付いていない国なのだと思います。悲しいですし恥ずかしいです。

 今月9日に校区の小学3年生13人と先生お2人が、「町じまん」? の授業で店に来られました。昨年11月(2年生の時)に「もっと なかよし まち たんけん」で来てくれた子も中に2人いました。本屋の思いを話し、いくつか質問を受けました。「どうしてこの校区で本屋をしようと思ったのか?」「どうして『子どもの本や』なのか?」という質問もあり、昨年2年生の時より一歩踏み込んでいる気がし、半年間の子どもの成長に驚きを覚えました。

現在 復刊中の「せんろはつづくよ」(M.W.ブラウン文 J.シャロー絵)を読み、こういった本がいつでも買えることが願いです と話しました。本屋の案内に書いている「ドリトル先生」「メアリー・ポピンズ」を心の友として出会ってくれることも願いであり、子どもの気持(大人から見た子どもの気持ではなく)がきちんの語られている本に出会ってほしい、それが質のある本だと思うと 話しました。 その後 店に来られた方が 質のことは難しかったのではと言われましたが、昨年の2年生 女の子の「本をよむとふいんき(雰囲気)があることをしりました。」の感想が、伝えたい思いを後押ししてくれたのだと思います。


 11日は 林竹ニ「授業三部作」の三作目、那覇市久茂地小学校6年生での授業「開国」の上映会でした。

5年前に初めて見、前ニ作品(「ビーバー」「アマラとカマラ」)以上に衝撃を受け、授業の質の高さを感じました。授業の後、高揚感の中 感想を述べている子どもたちが印象深く残りました。私も授業を受けている感覚だったのです。今回は俯瞰し 見たような気がします。日本の開国を歴史の年表や事柄だけでは感じられない、その時代が持っている空気や関わった人達の体温が感じられ、その上で日本の開国があったことが他人事ではない身近なこととして入ってきました。その歴史の線上に今の日本があり、その中で私達が生きていることの意味を感じます。

この子たちは この授業を一生忘れないだろう、そして沖縄に住んでいることの重要さを年月を経るとともに感じるのではと思いました。

知性を全体に感じる映画です。林先生が語られる知性と、林先生によって子どもたちが持っている知性が引き出されています。苦しみ もがき考えている子どもたちの顔は とても美しいです。

林先生の授業の映画(書籍も含めて)で語られていることと、「子ども文庫の会」の山本まつよさんが子どもの本を含め仰ってたことは同じです。

それは本質を見ていくことです。

本質とは遠いところで話されることに、心を寄せてしまう人が多いのを感じています。本質と向き合う苦しさではなく、心地よく入ってくることに心が向くのでしょう。伝えきれないもどかしさと力のなさを感じています。それが私の今の課題です。グループ現代撮影の林先生のあとニ作品「教育の根底にあるもの」「田中正造の最後の戦い」を見た後、何かしらの課題解決の糸口が見つかるかもしれません。

「教育の根底にあるもの」は10月上旬予定です。ぜひご覧ください。

                               2023年6月14日

                               井上良子


過去の往復書簡の掲載案内 

1回目 2021年6月23日

2回目 2021年8月20日

3回目 2022年2月5日

4回目 2022年5月25日

5回目 2022年8月15日

6回目 2022年9月24日

7回目 2023年1月15日

「ありがと書店」さんホームページでもご覧いただけます。


「ありがと書店」さんホームページ

https://prayer.jimdosite.com/