2021年6月28日月曜日

「季刊子どもと本」(子ども文庫の会)について

1980年4月30日創刊。年4回発行。現在(2021年6月末)第165号まで出版。 子どもが本に出会う年齢を2歳半からと捉え、2歳半から出会って欲しい 本を紹介している冊子。 この中で大切にしていることは本には質があり、そういった本に子どもが 出会っていって欲しい、と。なので取り上げている本にも質の幅があり、 物足りない本には厳しいほどはっきりとその物足りなさを記してある。 そこには、子どもを一人の人間と見、その子どもに真摯に向き合う編集者 の姿がある。 ぜひ御一読を。                        2021年6月28日

2021年6月27日日曜日

7月の営業日のご案内

7月の営業日はカレンダーの黄色の枠の日にちです。

今月はオリンピックの影響で祭日が変更となっておりますが、旧カレンダー通りの

営業日といたします。

なを、5日(月)、6日(火)は通常営業日ですが、お休みさせていただきます。

勝手をいたし、申し訳ございません。

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2021年6月23日水曜日

お知らせ 不定期往復書簡のこと

八女の「ありがと書店」(「えほん屋・ありが10匹。」改め) 店主 伊藤寛美さんと不定期の往復書簡を始めました。

下記の往復書簡は、「ありがと書店」のホームページでもご覧いただけます。 是非、そちらもにもお立ち寄りください。

https://prayer.jimdosite.com/

往復書簡(1回目)

『季刊 子どもと本』(子ども文庫の会)のこと

”季刊 子どもと本”は面白い。

どれだけたくさんの本が世の中にあるかということを知ってる大人が、人間 が人として生きていくためにはどんな本が必要なのか。そのことを教えてく れるのは生きる力をつける真っ最中の子どもであるということを知っていて、 たくさんの子どもと本に向き合われ、その報告が惜しみなく、丁寧に、優し く、時に厳しく記されていて、本を読む醍醐味は想像で、想像がどんなに楽 しく、生きる力になるかということを教えてくれる本だと思います。この本 で子どもたちの未来に責任を持たなくてはいけないことを痛切に感じました。

私が幼少期に母は自分の声が汚いからという理由で本を読んで聞かせてもら ったことはありません。 代わりに、レコード付きの紙芝居が家にはあり近所の子どもたちと遊ぶ際、 紙芝居の前に座ってもらってレコードをかけ、私は「ピンポ~ン」の音に合 わせてめくっていました。うれしかったのは父が紙芝居の枠を作ってくれて いたこと。

幼少期に何か読んでもらって感動したという記憶はありません。小学校に上 がり、本は国語の勉強の延長線上に用意されていたようなもので、今も実家 には、作文の書き方や伝記集が残っています。

そんな、文学とは無縁の環境で育ったおかげで、本の持つ深い力を感じたり 考えたりしたことはありませんでしたが、保育園に務めるようになってから 絵本のことを考えるようになりました。

保育園での勉強会で本屋さんの読み聞かせを体験し、絵本を読んであげるこ とが子どもの秩序を安定させる助けになるということをおしえてもらい、 そのことがきっかけで特定の園児に読み聞かせをすると、いつもあばれて いるその子が絵本を読んでいる最中は集中して聞いている姿に出会い、絵 本と子どもの関係性に驚き、その存在の意味を感じ始めていたころ「子ども と本」のことを知ります。

そこで紹介されている絵本から、人が強く生きていくために本には大きな力 があること絵本に質があるということなどを教えられ、本と子どもの関係を 深く知るほど、子どもの置かれている環境を無視できないと考えはじめてい ます。

井上さんは「子どもと本」のことをどうとらえていらっしゃいますか?            

                                                                                               2021年4月9日 伊藤寛美

 

拝復

お手紙ありがとうございました。

往復書簡の一回目に「『季刊 子どもと本』のこと」としてくださったこと、とてもうれしく思いましたし背筋が伸びる感じがしました。なぜなら福 岡で「子どもの本や」として本やをしている土台は「季刊 子どもと本」で あり、こども文庫の会のセミナー参加だったからです。そして、その流れで 伊籐さんとの出会いもありました。

 福岡での子ども文庫の会のセミナーに参加する前になりますが、知人宅で そこの家の子が「これ読んで。」と持って来たのが「ちいさいおうち」 (バージニア・リー・バートン文・絵)でした。その子はたしか五歳前だっ たと思います。読み終わって、内容の深さとともに五歳にもならない子が このような絵本を聴けることと、聴けることを信じて作者が語っていること に衝撃を受けました。

その後 福岡での子ども文庫の会のセミナーに参加をし、山本まつよさんが 読んでくださった中に「せんろはつづくよ」(マーガレット・W・ブラウン 文 J・シャロー絵)がありました。聴き終わり心の中で「もう一回読んで ください」と思ったのを覚えています。 私にとって今ある原点の絵本はこの二冊といえるかもしれません。  

子どもの頃の本の思い出として残っていることがあります。 四年生の三学期に福岡市内に転校して来、ほとんどしゃべらない私に気遣い 親切にしてくれたKちゃんが、学校よりの帰り道 宮沢賢治の本のことを熱 く語ってくれたことがあります。多分「注文の多い料理店」か「銀河鉄道の夜」だったのではと思います。 本は積極的に読んではなく、本の楽しさを知らなかった私は「そうなんだ。」と思いながら、本のことよりも熱く語るKちゃん自身の方に心が向いていたと思います。

四十年近くの間に「季刊 子どもと本」とともに取り上げてある本を読み続 け(全部ではありませんが)、扉を一つ一つ開けていくように本の楽しさに 出会ってきました。読み続けてきた本は見えないところで私の力になってき てくれています。

私を気遣ってくれたKちゃんの純粋さとやさしさを、その時以上に 今強く 感じます。本も同じで読んだ時の楽しさ 心動かされたことが、色あせず 時にはその時以上に残っていくように思われます。すぐ形にでないもの目に 見えないものほど 本もの(本質)なのではと思います。

熊本のNさんが数ケ月前、「『季刊 子どもと本』って読者に迎合していない よね。最初のころの思いがブレていない。そして自然と読者を育てていって いる。」とおっしゃていました。周りに迎合し本質がずれてしまうことが多 くある中、本質を見失わずに語ることにより、読者を本質に向き合わせてくれている。それにより私達読者も本質の大切さと、意味 を自然に感じられてこられているように思います。

そのような「季刊 子どもと本」に知的さと健全さを感じます。             

                                2021年6月1日  井上良子